マクドナルドのここ5年間の売上高・客数・客単価を分析する

2013年4月05日 (金曜日)
マクドナルドのここ5年間の売上高・客数・客単価を分析する
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最近不調が話題になるマクドナルドですが、近年の数字が気になったので過去5年分の数字を調べてみました。そうすると、大きな変化があったのは2012年に入ってからで、2012年の末にはさらに状態が悪化して2013年に至ります。この不調はマクドナルド個別の問題であり、震災、外食産業、ファーストフード業界など、大きく括って考えるのは正しくありません。直近では前年比80%台にまで数字が落ちているのですが、これと言った決定的な悪い材料が見当たらないだけに、なぜこんなに大きく数字を落とすのか理由が分かりません。

フードビジネス総合研究所さんのホームページの一番下の左側に、「外食大手月次売上」というリンクがあります。2008年から2013年までのデータがあるのですが、この中にマクドナルドの売上高、客単価、客数の推移があります。

2008年から2011年末までは客数・客単価とも堅調に伸びている

マクドナルドの成功戦略をおさらいしておくと、低価格の商品で顧客を引き付けて、高価格の商品を買ってもらうというものです。低価格の商品は100円マックになるわけですが、期間限定で100円なのではなく、ずっと100円であるところが大きな特徴です。いつ行っても100円で安く買えるようにしておくことで、来店へのハードルを常に低くしておくことが出来るのです。そうすると、「今日は高いのを食べてみるか」というような、高額な商品の注文へとつながることもあるのです。

牛丼も低価格と高価格の商品をあれこれ扱っているのですが、マクドナルドと牛丼を比べると大きな違いがあります。牛丼はセールをすると客数が大きく伸びて、客単価は逆に大きく下がります。これは、セールの時だけ来店する顧客が多いことを意味しています。一方、マクドナルドの場合は牛丼ほどに客単価が落ち込まないのです。つまり、最初は低価格の100円マック目当てに来店したとしても、その後に高価格の商品を買うリピーターになり、客単価の下落を小さくしているのです。

小さな変化は毎年、毎月あるのですが、全体的に見るとこのような良い流れが2008年から2011年の末まで続いています。「客数は伸びて、客単価はそれほど落ちない」というのが、マクドナルドの成功パターンの特徴です。普通はどちらかが伸びればそれに連動して下がるのですが、マクドナルドの場合は客単価の下落が特に小さい点が成功の秘訣です。このマクドナルドの成功は称賛されることが多いのですが、牛丼業界のやり方と比較すると洗練されていると思います。

2012年の3月と12月に大きな動向の変化が見られる

原田社長は、既存店が前年割れを続けているのは「昨年5月からディスカウントプロモーションをやめたから」と指摘。

長く続いて来た好調に変化が見られるのは、2012年に入ってからです。2011年は売上高が前年を超えた月が9個あるのですが、2012年は1月と3月のわずかに2個しかありません。3月以降は前年比100を超えることは一度もなく、不調がずっと続いていることになります。特にこれと言った要因は分からないのですが、大きな変化が起こっていることが数字から分かります。

こちらの記事にあるのですが、マクドナルドは2012年の5月以降プロモーションをやめているとのことです。具体的にいつセールをした、してないというのは個別には分からないため、プロモーションの影響は判断しにくいです。数字だけを見ると客数は増えていることが多いですから、1年間通じてプロモーションをしているような印象を持ちます。実際は、プロモーションをしなくても客数を伸ばすことは出来ていたということになります。

そして、2012年の11月にはついに客数が100を割り込むことになり、客数、客単価ともに100を割ることになります。これまでも単発的に100を割ることはあるのですが、2012年の11月から2013年の2月まで4カ月連続で100を割っています。おそらく、3月4月も同じような数字が出て来るのでしょうから、明らかに一段悪い状態になったと言えます。このような状態になって、インターネットやビジネス誌などでもマクドナルドの不調が取り上げられることが増えています。

マクドナルドの不調は外食産業全体の動向とは関係ないと言える

多くの人に当てはまるかどうかは分からないのですが、私は何となく物事をマクロ的に考えてしまいます。特にマクドナルドのような大企業であれば、その様な考え方をしても大きくは間違えないだろうと思っていました。しかし、今回じっくり数字を見て見ると、これまで考えていたことがほとんど間違っていることに衝撃を受けました。具体的には、震災の影響でみんな外食しなくなったのだろう、あるいは、経済が悪いから外食全体が不調なのだろうというような考え方は正しくないのです。

例えば、震災があった2011年のマクドナルドの数字を見て見ると、4,5,6,9,10,11,12月で前年の売上高を超えています。2011年はきっと業界全体で苦しかったに違いないと考えるわけですが、実際は個別企業によって数字はバラバラなのです。あるいは、マクドナルドが不調と聞くと、ファーストフード全体も不調なのだと考えてしまうかもしれません。しかし、モスバーガーの数字を見て見ると2012年の末から好調を続けていて、マクドナルドとは全く正反対の状態になっています。

マクドナルドのここ5年間の状況を整理すると次のようになります。2012年の3月まではマクドナルドの成功パターンが上手く行っており、客数、客単価ともに堅調で前年比100を超えることが多くなっています。2012年の3月以降は客数は多いものの、高単価の商品に手を出す顧客が少なくなり、客単価が落ちて売上も落ちるようになります。そして、宣伝活動を控えた結果、2012年11月にはついに客数も前年割れとなり、客数、客単価ともに前年を割れる苦しい状況になっています。

マクドナルドの新しい戦略は従来とまったく同じものである

今年に入ってからも、1月に実施した「ENJOY!60秒サービス」、コーヒーやハッシュポテトを月曜ごとに無料配布して朝食需要を開拓する「フリーマンデー」(1月以降、断続的に実施)で“地ならし”をしてきた。

現在の苦しい状況に対して、マクドナルドは高価格路線で行くことを宣言しています。マクドナルドのそもそもの不調は高価格商品が売れなくなったことですが、その高額商品を販売することが新しい戦略です。現在は客数、客単価とも落ちていますが、客数についてはまったく問題視していないのではないかと思います。宣伝をすれば客数を伸ばすことは簡単ですから、問題はいかにして高額の商品を買ってもらうかです。

実際のところ、マクドナルドがやっていることのベースは昔と同じです。100円マックの代わりに60秒で1個配布のキャンペーンや、フリーマンデーを行って顧客に来店を促しています。100円マックとどう違うかと考えると、タダで商品をもらえる可能性があるだけ、こちらのキャンペーンの方が効果があるかも知れません。そして、売るべき高単価商品は「チキンてりたま」になるわけですが、レビューを見ると美味しそうです。

(参考) – マクドナルドの完全新商品「チキンてりたま」、過去最高の評価を獲得した理由と食べた感想 | め~んずスタジオ

それにしても、マクドナルドが急に不調に転じた理由はいったい何なのでしょうか。これといって客離れを起こしそうなことをしていないマクドナルドが、前年比80%台まで落ち込むというのは異常だと思います。高い、飽きた、サービスが悪い、顧客それぞれに色々と不満はあるでしょうが、それが同じ時期に一緒に爆発するというのは考えられないことです。目に見えて明らかな要因は見当たりませんし、たまたま多くのお客さんが飽きたタイミングが一緒だったのかというのが私の仮説です。ですから、結構簡単に数字を戻して来るような気もするのですがどうでしょうか。